法人設立の手順について

法人設立 法人

独立前の税理士法人勤務時代に、お客様ご自身で法人設立の手続きをされていたお客様がいたこと、今後ご自身で法人設立の手続きをしてみたいと思っている方の何か参考になればと思い、法人設立の手順について記載してみたいと思います。

会社の種類

会社法上に規定されている会社の種類は「株式会社」・「合同会社」・「合資会社」・「合名会社」があります。この中で設立されるケースが多い「株式会社」・「合同会社」の比較表は下記の通りとなります。

株式会社合同会社
法人設立にかかる費用24万円程度~10万円程度~
(登録免許税)(15万円~)(6万円~)
(定款認証手数料)(3万円~5万円)(0円)
(登記申請用の謄本)(約2,000円)(0円)
(定款貼付用印紙代)(4万円)(4万円)
定款の認証必要不要
資本金1円~1円~
出資者の人数1人以上1人以上
出資者の名称株主社員
出資者の責任有限責任有限責任
代表者代表取締役代表社員
取締役の人数1人以上全社員
取締役の任期2年~10年なし
決算公告必要不要

株式会社の定款認証手数料は、資本金等の額が100万円未満の場合には3万円100万円以上300万円未満の場合には4万円その他の場合は5万円となります。
電子定款による場合には、定款貼付用印紙代4万円は不要となります。
また、上記費用の他、会社の印鑑作成代などが必要となります。

法人設立の流れ

会社の概要を決定する

商号

会社の名前になります。(例:株式会社○○○○ or ○○○○株式会社 など)

事業の目的

定款や登記簿謄本に記載する内容になります。現在行っている事業以外に、今後行う予定の事業も記載しておくことにより、新たに事業を行った際の変更登記を省略することが出来ます。
(注)介護事業などを行う場合には、事業の目的に必ず記載する内容などがありますので注意が必要です。

本店所在地

会社の住所になります。
法人税申告書などに記載したり、税務署から書類が送られてくる際の住所になります。

発行可能株式総数

発行出来る株式数の上限を設定します。
下記【設立時に発行する株式数】よりも多く設定する必要があり、今後増資などで株式を発行する予定がある場合には、余裕を持った株式数に設定する必要があります。
一例ではございますが、株式総数を1,000株に設定し、設立時に発行する株式数を20株としている顧問先様がいらっしゃいます。

決算期(事業年度)

会社の事業年度になります。
例えば、日本の法人で多いと言われている決算期が3月です。この場合の事業年度は、4月1日~3月31日(申告期限は5月31日)になります。
業種によって繁忙期が異なるため、比較的落ち着いている月に決算月や申告月を設定するのも1つの方法になります。比較的落ち着いている月が7月の場合であれば、事業年度を8月1日~7月31日(申告期限は9月30日)に設定する、もしくは6月1日~5月31日(申告期限は7月31日)に設定することにより、決算月や申告月の作業を比較的落ち着いている7月にすることが出来ます。

設立時に発行する株式数

1株当たりの金額を決定し、資本金÷1株当たりの金額で算定します。
(例:1株当たりの金額が5万円、資本金が100万円の場合)
100万円÷5万円=20株となります。

資本金

資本金の額は1円以上であればいくらでも設定が可能となります。
業務上、資本金の額の大きさが影響しないのであれば、100万円~300万円程度に設定している会社は多いです。

対外的に資本金の額を大きくしないと信用を得られないような業種については、1,000万円以上に設定している会社もあります。
(注)資本金の額を1,000万円以上に設定した場合、設立1期目から消費税の納税義務者(課税事業者)になりますので、注意が必要です。

設立時の役員

代表取締役・取締役を決定します。
家族経営などで法人を設立する場合には、代表取締役1名と代表取締役の配偶者を取締役にして2名とするケースが多く見受けられます。

出資者(発起人)

法人の株主になります。発起人として定款に記載する必要があるため、決定しておく必要があります。

法人の印鑑を作成

商号が決定したら法人の印鑑を作成します。
印鑑の種類には実印の他、銀行印・認印・ゴム印など作成しておくと便利なものがあります。

定款の作成

上記で決定した会社の概要を基に定款を作成します。
定款のひな形は「日本公証人連合会」のホームページに掲載されています。
定款の作成が終わったら、事前にFAXなどを利用して公証役場に不備がないかの確認作業を行うと、認証手続きがスムーズに進みます。

定款の認証

会社の本店所在地を管轄する公証役場にて認証を受けます。
〈認証に必要な書類〉
・定款:3通
・発起人の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
・発起人の実印
・定款認証手数料:3万円~5万円
・謄本手数料:2千円程度
・収入印紙:4万円(郵便局などで購入)
(注)上記の必要書類は紙での認証の場合になります。また、合同会社設立の場合には、定款の認証手続きは不要となります。

資本金の払込みをする

法人口座はまだ存在しないため、発起人の口座に資本金の額を入金します。
その後、下記の通帳のコピーを用意します。
・通帳の表紙
・表紙の次のページ(支店名・口座番号・口座名義人が記載されているページ)
・資本金の額が入金されていることが確認出来るページ
(注)発起人と口座名義人が同一の場合には、1度資本金の額を引き出して、再度入金する必要があります。

登記申請をする

会社の本店所在地を管轄する法務局で申請を行います。

登記に必要な書類

・登記申請書
 法務局のホームページに記載例などの参考資料があります。

・収入印紙貼付台紙
 登録免許税を貼付します。

・定款
 上記【定款の認証】で認証を受けた定款を提出します。

・発起人の同意書
 発起人が割当てを受けるべき株式数及び払い込むべき金額、株式発行事項又は発行可能株式総数
 の内容、資本金及び資本準備金の額が定款に定められていない場合に必要となります。
 基本的には上記【会社の概要を決定】し、ひな形通りに【定款を作成】した場合、提出不要なケ
 ースが多いと思われます。

・本店所在場所決議書
 定款に本店所在地を地番まで正確に記載した場合には不要となります。

・設立時代表取締役を選定したことを証する書面
 取締役会設置会社の場合には必要となります。

・設立時代表取締役・取締役の就任承諾書
 発起人が代表取締役及び取締役の場合には、定款に記名と実印があるため、不要となります。

・設立時取締役の印鑑証明書
 発行後3か月以内のものになります。

・払込みを証する書面
 上記【資本金の払込みをする】で作成した通帳のコピーと一緒に提出します。

・印鑑届書
 法人の実印を登録するための書類になります。

・登記すべき事項を記載した書面
 記載する内容については、法務局のホームページに入力例があります。

まとめ

前回は設立後の届出書などについて書かせて頂きましたので、今回は届出書を提出する前の段階である法人設立の手順について書いてみました。少しでもお役に立てれば幸いです。

設立後に提出する届出書などはこちら
https://kitani-tax.com/corporation-notification/