短期前払費用について

短期前払費用について 個人事業主・法人

毎月支払いの経費の中には、期末(法人の場合は決算月・個人の場合は12月)に翌月分の経費を支払っているケースがあります。このケースの場合、本来は経費に計上出来ず資産に計上することになります。
しかし、一定の要件を満たすことで経費に計上することが認められています。以下で見ていきましょう。

短期前払費用とは

期末に翌月分の経費を支払った場合、本来は資産に計上する必要がありますが、一定の要件を満たすことで「短期前払費用」の規定を適用し、経費に計上することが可能となります。

短期前払費用については、法人税基本通達2-2-14に下記の通り定められています。
※所得税基本通達37-30の2にも同様の内容が定められています。

2-2-14(短期の前払費用)
前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。

上記の規定に定められている要件は下記の通りとなります。
①前払費用に該当するものであること
②支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものであること
③支払った日の属する事業年度・年分に継続して損金(必要経費)算入していること
※前払費用:一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対して支払われた対価をいう。

前払費用に該当することを前提にし、重要なのは1年以内に役務の提供を受けること処理の方法を継続することの2点になります。

短期前払費用の適用を受けられる代表例

短期前払費用の適用を受けて経費に計上できるもののうち、代表的なものに地代家賃と保険料があります。

国税庁ホームページに下記の質疑応答事例が掲載されています。

〈3月決算法人〉

事例1:期間40年の土地賃借に係る賃料について、毎月月末に翌月分の地代月額1,000,000円を支払う。

事例2:期間20年の土地賃借に係る賃料について、毎年、地代年額(4月から翌年3月)241,620円を3月末に前払により支払う。

事例3:期間10年の建物賃借に係る賃料について、毎年、家賃年額(4月から翌年3月)1,000,000円を2月に前払により支払う。

事例1・2は短期前払費用の適用があり、事例3は短期前払費用の適用がないと回答しています。

事例1・2は前払費用に該当し、支払った日から1年以内に役務の提供を受けるため、短期前払費用として経費に計上することが可能となります。
事例3は前払費用に該当はするが、支払った日(2月)から1年(3月~2月)以内に役務の提供を受けない(役務の提供期間が4月~3月のため、1年を超えている)ため、短期前払費用に該当しないことになります。

(注1)事例2のケースでは契約上、年払い契約になっていることが望ましいです。契約上での年払い要件はありませんが、月払い契約のものを1年分支払った場合、利益操作のための支出とみなされ否認される可能性があります。

(注2)短期前払費用の適用には処理の継続が必要となります。今期は利益が出ているため、年払いで1年分を経費に計上。翌期は利益が出ていないため、月払いで1月分を経費に計上するなど、明らかな利益操作の場合には否認される場合があります。1度適用した方法を毎期継続する必要があります。

(注3)前払費用に該当するための要件として、等質・等量のサービスを継続的に受けている必要があります。税理士や弁護士に対する顧問料は等質・等量ではないため、前払費用に該当しない点にご注意ください。税理士や弁護士は毎月全く同じサービスを提供しているわけではなく、その時の状況に合わせてサービスを提供しています。こういった経費は等質・等量に該当しないことになります。

まとめ

今回は短期前払費用について記載してみました。
決算対策などで利用されるケースもあるかと思いますので、内容を確認する上で何かお役に立てれば幸いです。